私のこと

まだ小学校に上がる前だったと思います。父親がリコー・オートハーフで撮った家族写真のベタ焼きが面白くて、写真に興味を持ちました。ハーフサイズのベタ焼きですからほんとに小さな画面ですが、そこに白黒の鮮鋭な画像が写っているのに驚き、父からカメラを借りては町の様々な風景を撮ったりし始めました。またカメラという不思議な機械自体にも興味を持ち始めました。

少し本格的に写真にのめり込んだのは高校時代、お小遣いを貯めて何とかミノルタのSR101を手に入れました。大学に入ってからAE機が欲しくなり、SR101は下取りに出してミノルタXG-Eと交換しました。撮っていたものは町の風景が中心ですが、人の表情なども面白いと思い始めました。また中判にも興味を持ち、新橋の中古店でブロニカS2をかなり安く手に入れたのですが持ち歩くのがおっくうになり、当時まだ新品を売っていたヤシカの二眼レフを購入しました。

社会人になって会社に入ると、その実験室で使われていたNikon F3が憧れでしたが、自分の物を購入することはなかなか出来ませんでした。お金が貯まらないこともありますが、忙しくてゆっくり撮影を楽しむ時間もとりにくくなりました。それから10年近くたって、確かF4も発売になっていましたが、やっとF3を手に入れました。1990年頃です。もちろん私は全くの素人で、写真はあくまで趣味ですが、写真だけでなくカメラのメカにも興味があったので、それまでは最新のカメラにばかり目が向いていました。しかし写真を撮るのに進歩するカメラの性能だけに頼っていてはダメだと、遅ればせながらやっと思えるようになったのがこの頃です。上手いか下手かは別として、自分の納得できる写真を撮るには、自分の気持ちに合ったカメラを使えばよいのだと思うようになりました。世の中は既にオートフォーカスが幅を利かせていて、コンパクトカメラはオートフォーカスを使っていましたが、マニュアルフォーカスのF3を手に入れたのは、そんなことを思い始めた頃でした。

そして程なく、あの「クラシックカメラ・ブーム」が起こります。私も雑誌「カメラ・ジャーナル」は創刊からずっと読んでいましたし、A瀬川先生の本など何冊も買いました。休日は東京へ出かけて中古店まわりを始め、まず手に入れたクラシックカメラはフォクトレンダーのVitomatic II、それから北青山に今はありませんがとっても洒落た小さなお店を見つけ、通うようになりました(ネットなどでブームを作った南青山の有名店Rではありません)。カメラを見ているとあれこれ目移りしてしまうのですが、しがないサラリーマンですから、そうあれこれ手に入れることは出来ません。しかし非常に安価で手に入れる方法を見つけたのです。そう、米国のネットオークションeBayです。


カメラをたくさん手に入れた方法

私のカメラのほとんどは、2000年から2003年くらいの間にeBayで手に入れたものです。安価で手に入れられた理由は3つくらいあります。

1つ目は、まず中古カメラ価格の相場が、欧米に比べ日本では確実に何割か(あるいはそれ以上)高かったことです。これは日本はブームで高騰していたこともありますが、日本ではやたらとビンテージものを崇拝する国民性もあるのではないでしょうか。もっとも現在はネットの普及もあって、全世界的に相場の差は少なくなっているようです。

2つ目の理由は、当時1ドル=100円くらいの円高が続いていたことです。(その前の数年間は、120〜130円くらいでしたから)

そして3つ目の理由は、当時のeBayはまだまだ本来のフりーマーケット的な雰囲気が強く、個人の売り手が「どうせ捨てるくらいだったら必要としている人が払える金額でお譲りします」というのが多かったことです。初めてeBayを見たときに、これは広大な田舎であるアメリカ大陸のあちこちに点在する多くの人々が、それぞれ個人でアメリカ全土、あるいは全世界を相手にフりーマーケットを開いているような、壮大な印象を受けました。従って掘り出し物も大量にあったという訳です。一方日本のネットオークションでは、個人の出品者でもやたらと高く売ろうとする人が多いのは、これも国民性でしょうか?

このような事情を上手く利用すると、ほとんどタダで1台のカメラを手に入れることが出来ました。例えば次のようにです。
 
まずeBayで「お父さんが使っていた古いライカ、見てくれは悪いけど一応動くようです」なんていうのを1台200ドルくらいで落札できたので、これを別の人から2台落札します(出品数も多いので、掘り出し物が2台くらいはすぐ見つかりました)。送料や送金手数料などを入れても、1台300ドル、合計600ドルくらいで手に入りました。その2台を掃除したり、慣らし撮影したりして、気に入った方を1台残し、もう1台も売れそうな状態のものなら、国内のネットオークションに出品すると簡単に5〜6万円にはなりました。つまり差し引きではほとんどタダで1台手に入れたことになります。(もっとも個人オークションですから、落札した2台とも思っていたような状態であるとは限らないので、ある程度賭けの要素はあり、上手くいかなかったことも度々ありました)

それから海外からの購入が頻繁に出来たのは、当時たまたま転勤して大きな郵便局が職場の近くにあったため、昼休みなどに海外送金が容易に出来たこともあります。当時はネット決済がまだ一部の業者などしか出来ず、個人の売り手は大半が為替か小切手を要求してきました。郵便局から国際郵便為替を送るのが私にとってはやりやすい方法でした。(今では個人でもPayPalなどネット決済が当たり前になっていますが)

こうして決して美品でもコレクターズ・コンディションでもありませんが、一応動くカメラやレンズたちがどんどん集まってきました。

2008.2.9





Back to HOME