電池管4球スーパー・ポータブルラジオ


「ポータブル・ラジオのペー ジ」 で紹介されている中波帯が受信できる4球スーパーラジオのキットを購入し、組み立てました。左の写真が完成後の外観ですが、縦横15センチ四方、奥行き7センチほどの小さな軟質プラスチックの物入れケースにきれいに収まるようになっています。

 電源は、ヒーター用A電池が単一型乾電池1本(1.5V)、B電池が006P乾電池(9V)を8本直列にして72Vとしています。アンテナコイルに長さ 15センチほどのフェライトバー・アンテナを使っていますので、外部アンテナなしで十分な感度が得られ、乾電池の電源と相まって、まさにポータブルラジオとして実用になります。

 完成してほぼ5ヶ月が経過し、この間におそらく累計30時間以上は使用していると思いますが、現時点で通電中のA電圧は1.2V以上、B電圧は60V以上あります。「ポータブル・ラジオのページ」によりますと、A電圧は1V程度、B電圧は35V程度に下がるまで十分使えるとのことですので、まだまだ電池交換なしで行けそうです。

 左の写真がケースのふたを開けたところです。スピーカをふたの裏側に取り付け、その他の部品はほとんどがケース本体側に収まります。左下の写真もあわせてご覧いただくと、ケース本体の上半分にほとんどの部品が配置され、下半分は電池スペースになっているのがお解りいただけるかと思います。


 ケース右側にある2つの操作つまみのうち、上はバリコンの同調つまみ、下はボリューム兼電源スイッチです。使用している真空管は写真右側から、局部発振・周波数変換の直熱7極管1R5、中間周波増幅の直熱5極管1T4、検波・低周波増幅の直熱2極・5極複合管1U5、電力増幅の直熱5極管3S4の4本です。電源が電池で整流管が不要ですから、機能的には普通の5球スーパーと同等です。

 ケース上半分をさらに拡大して下の写真を撮りました。多くの部品が1枚のアルミ板に取り付けられています。真空管の後方に中間周波トランスが2本、さらにその奥の横長の黒い棒がアンテナコイル(バーアンテナ)です。左側の2本の真空管に隠れて見にくいのですが、アンテナコイルの下に小さな出力トランスもあります。バリコンからアルミ板を挟んで下、ボリュームのすぐ上にあるのが発振コイルです。


 以上の設計は、回路・構造を含めてすべて「ポータブル・ラジオのページ」の原科さんによるものです。mT管4本を使用したラジオとしてはコンパクトにま とまっていますので、アルミ板下の空中配線はかなり混雑し、年で弱った視力には若干辛いものがありましたが、なんとか完成させることができました。配線が混雑しているということは無用な発振なども起こりやすいので、その点を注意して部品の配置や配線の引き回しを決めました。

 組立て作業の終了後、スーパーヘテロダイン受信機の感度を大きく左右する重要な作業がトラッキング調整です。これは局部発振周波数とアンテナ側の同調周波数との差が、どの周波数を受信している時でも常に中間周波数(本機の場合455kHz)に一致するよう調整するのが理想です。ただし真空管スーパーラジオが全盛の頃のように、いわゆるトラッキングレス・バリコンと、それと組になるよう設計されたコイル類を使用するなら調整も比較的容易ですが、現在では入手可能な部品で組まざるを得ないのが一般的ですから、厳密なトラッキング調整はかなり困難です。本機の場合、バリコンはアンテナ側に比べて局発側の容量の小さい親子バリコンで、それぞれに調整用のトリマが付いています。またアンテナコイル、局発コイルともにフェライトコアの調整ができます。バリコンのトリマを調整すると最高周波数が大きく動き最低周波数がわずかに動いて周波数の幅が変化し、コイルのコアを調整すると、周波数が全体に動きますから、私は大まかに言うと次の要領で調整を行いました。

(1)まず局発側のトリマを調整して周波数の高い局(当地では地元のCRT栃木放送1530kHz)が、また局発コイルのコアを調整して周波数の低い局 (当地ではNHK東京第一放送594kHz)が、それぞれ適当なバリコン位置で受信できるようにする。このとき片方を調整するともう片方も動くので、これを何回か繰り返して落ち着かせる。

(2)次にアンテナ側のトリマを調整して周波数の高い局の感度が高くなるようにし、アンテナコイルのコアを調整して周波数の低い局の感度が高くなるようにする。これも何回か繰り返す。感度はAVC回路の電圧をテスタで測るとわかりやすい。

 なお本機の部品の組み合わせでは、局発周波数が若干低い側にずれがちでした。すなわち私の場合は局発が十分強く発振するよう局発コイルのコアがある程度入ったところから(1)をスタートしたのですが、この状態ですとバリコンの羽根がかなり抜けたところで周波数の低い局が受信できます。そこで局発コイルのコアを徐々に抜きながらバリコンの羽根を入れていくと、感度が上がっていきました(おそらくアンテナ側の同調点に近づいてトラッキングがとれてくるのだと思います)。しかし局発コイルのコアを抜き過ぎると逆に感度が下がり始め(局発が弱まるのだと思います)、さらに抜いていくと局発が止まってしまいます。この感度が最も高くなるあたりに局発コイルを調整しました。その結果、地元局はもちろん、昼間でも東京のすべての局が十分に受信できるようになりましたので、かなり大まかですが調整はこれで良しとしました。

 本機の真空管はすべて直熱管ですから、電源スイッチを入れてすぐ(1秒以内)に音が出るようになります。また電源が電池ですから、ハムをはじめ電灯線経由で入るノイズが皆無で、大変クリアな音質です(電灯線電源の真空管ラジオは通常、家の外の電柱に至る電灯線自体が外部アンテナ線として働くようになっていますから、他の電気製品や周囲で発生するノイズを拾います)。静かな場所で長時間聞いても、ノイズが少ないため耳が疲れず快適なところが電池管ラジオの良さであることを再認識しました。多少改造してヘッドフォンなどで聞くのにも向いているかもしれません。

 なお本機のキットの販売は、残念なことに昨年(2004年)の暮れに終了してしまったようです。しかし同等の、あるいは代替の部品を集めることは不可能ではないと思われます。「ポー タブル・ラジオのページ」に詳しい回路や部品の説明がありますので、これを見て自作されようという方の参考になれば幸いで す。
2005.4.4
Updated 2005.4.5
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