HAM'S OFFICE TS-6st2M


(左はTS-5mt2、右がTS-6st2M)



 前作のTS-5mt2の製作が うまくいったのに気を良くして、次に同じHAM'S OFFICEさんの2バンド6級スーパーラジオのキット TS-6st2M を組み立てました。こちらは後ほどご紹介しますが、調整などで少々てこずりました。

 このキットの特徴は、中間周波増幅が2段で、IFTにトリオのT-48という帯域(選択度)を3段階に切換えられる3個セットのものを使用していることでしょう。このIFTセットが希少で、これの在庫がなくなり次第、キットの製造も終了するとのことです。
 真空管は6WC5-6D6-6D6-75-41-5Z3の6球で、中波帯と短波帯の2バンドです。大型のバーニアダイアルで選局はスムースです。中央のメータはSメータですが、これの代わりにマジックアイを装備したTS-7st2 というキットもあるとのことです。なお天井のカバーは、スモーク半透明のアクリル板を使って自作しました。



 ST管の使用や大型IFTなどで、外観は TS-5mt2に比べるとかなり堂々としています。部品も増えていますので、配線作業にも時間はかかりましたが、mT管より端子の間隔が広いので、その点は配線が楽です。ただバンド切換えとIFTの選択度切換えの2つのロータリースイッチ周辺は配線が混み合いますので、慎重な作業が必要です。ロータリースイッチの回路数には余裕がありますので、私はバンド切換えのロータリースイッチの配線を、付属の実体配線図とは変えて作業がしやすいようにしました。ただしこれが浮遊容量の変化などを引き起こし、後で述べますトラッキング調整を難しくした一因となったのかもしれません。


(↓下の写真でロータリースイッチは、左がIFTの選択度切換え、右がバンド切換え。左下に2つ見えるトリマーコンデンサはOSC用、右の方に2つ横に並んできるのはANT用。)



(↓下の写真で、バリコンシャフトの左側は中波用、右側は短波用のANTコイル。バリコンの右側の2つの小さなIFTのようなものはOSCコイル。)





 中波用、短波用それぞれのANTコイルとOSCコイル、4個のトリマ・コンデンサ、2連バリコン、それとバンド切換えロータリースイッチを繋ぐところに時間を要しましたが、配線の醍醐味を感じられるところでもあります。

 無事組立てを終えて、まずは中波帯のトラッキング調整をしようとしたのですが、これがうまくいきません。地元の強力な局は入るのですが、他の局がほとんど聞こえません。手持ちの古いグリッド・ディップメータは短波帯以上のコイルしかありませんので、中波帯の調整には使えません。そこでここは思い切って、古いリーダーのテスト・オシレータ LSG-11をオークションで手に入れました(むかしラジオ少年の頃は、欲しくても高価で手に入れられませんでした)。真空管式の古いものですが、既製のラジオで試してみますと、精度もそこそこありそうです。まずはこれで455kHz付近を発振させ、IFTの調整を行いました。帯域を狭くした設定で3本のIFTを調整すると、これだけでかなり感度が上がりました。




 次にテスト・オシレータで中波帯をあちこち発振させながらバリコンを回しているうちに、どうも局発の周波数が低すぎるらしいことがわかってきました。そこでOSCコイルのコアを抜いていきますと、局発が止まってしまいます。ではOSCバリコンはどうなっているかと言うと、ANTバリコンと等容量ですので、直列にパディング・コンデンサが入っていますが、これが680pFの固定コンデンサになっています。そこでこれを手持ちのコンデンサと組み合わせて400pFくらいにしてやると、中波帯をほぼカバーする局発範囲となりました。そこでANTトリマで周波数の高い局(栃木放送1530kHz)、ANTコイルのコアで周波数の低い局(NHK東京第一放送594kHz)の感度を調整しましたが、これですと中ほどの周波数(900〜1200kHzくらい)の感度が低いように思われました。そこでANTコイルのコアは中ほどの周波数の局(TBS 954kHz)の感度が高くなるよう調整したところ、周波数の低いところの感度は若干下がりますが、全体にほぼ同等の感度となったので、とりあえずこれで良しとしました。本来はパディング・コンデンサを半固定タイプにするなどして、もう少し調整すべきでしょう。

 短波帯については、とりあえず7〜15MHzくらいに合わせましたが、本来はANTコイルとバリコンの同調範囲をきちんと把握した上で、この時の局発周波数の範囲に合うよう、パディング・コンデンサの値を決めてやるべきでしょう。

 このキットでもう一つ少し気になっていることは、電源を入れると真空管が暖まり徐々にスピーカからかすかなノイズが聞こえてきますが、この時点では局発はまだ発振しておらず、さらに10数秒ほどするといきなり発振が始まって受信できるようになることです。6WC5に加わる電圧を見ていますと、電源を入れると整流管5Z3が直熱管のためかすぐに6WC5のプレートと第2・第4グリッドには約200Vが加わるようになります。6WC5が暖まってくるにつれて、プレート電圧はあまり変わりませんが第2・第4グリッド電圧は徐々に下がって、100Vを切ったあたりでいきなり発振が始まり、最終的には90Vくらいで安定します(ここが6WC5の本来の動作点と思われます)。一時的にせよグリッドに高電圧が加わるのが少し気持ち悪いのですが、昭和20年代くらいまでのラジオの回路図を見ると、整流管だけ直熱の80とか12Fなどを使ったものが多々見られますので、あまり問題はないのでしょうか?

 以上のようにまだきちんとトラッキングがとれているとは言いがたい状態ですが、これでも実用に十分な感度が得られています。中波用と短波用に別のパディング・コンデンサを用意して、バンド切換えと共に変えられるように改造することを考えています。またANTコイルは比較的大きなボビンに巻いた単純な形状をしていますので、これの調整(改造)も容易かと思われます。

 IFTの帯域切換えは、夜間など混信の多いときや短波帯では重宝します。実用機として、また各種の改造や研究用としても、少し腕のある方には大変面白いキットだと思います。
2005.4.17
Updated 2005.4.23

「真空管ラジオ・アンプ」へ戻る

電池管高1中2受信機へ