電池管高1中2受信機と TRIO 9R-59DS |
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それから数年間はこの9R-59DSを使っていたのですが、その後の長いブランクを経て、昨年、9R-59DS用のコイルパックと、9R-59用のナショナルのバリコン(メインとスプレッドのセット)が相次いでオークションに出品されているのを発見したので、つい懐かしくて落札してしまいました。さらに押入れの奥に眠っていた9R-59DSも掘り出して、たまっていた埃などを落として電源を入れてみたところ、ボリュームのガリはひどいですが、何とちゃんと受信できるではありませんか! ボリュームを復活させたり、簡単なレストアをしながら、落札したコイルやバリコンで何か作ろうと考え始めました。 |
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何を作ろうか・・・ 何か作ると言っても、このコイルとバリコンを最大限生かそうと考えると、短波帯までのゼネカバ受信機しか思い浮かびません。今まで作ったのは高1中1までの中波帯ラジオですから、少しステップアップして今度は高1中2の電池管を使った通信型受信機(もどき)にします。30MHzくらいまで使いたいので、問題は周波数変換管を何にするかですが、いつもお世話になっている秋葉原の真空管屋さんへ行ったら、高周波特性が優れると言われる1AC6/DK92が何十本も安価で(1R5より安く)並んでいるではありませんか。思わず数本購入しました。なお電源はACと電池の2ウェイです。 |
背面から。アルミ板からIFTが2本ぶら下がっています。
真空管は挿していませんが、同じようにぶら下がります。 |
構造は・・・ 回路はごく一般的な高1中2の受信機ですが、構造は少し変わったものにしました。得意(?)のアクリル板とアルミ板の組合わせですが、本体をひっくり返したり横倒しにしたりせずに、配線、調整、さらに回路の改修のほとんどができるようにしました。周囲のアクリルカバーを取り外すと、正面に向かって右側の側面にコイルパックの調整箇所があらわれ、上面に回路配線の主要部が、左側の側面に電源部等があらわれます。真空管は上側のアルミ板の下に逆さまにぶら下がります。つまり普通は金属シャシの外側に真空管その他大物部品の本体があり、シャシの内側で配線しますが、これは逆で、アルミシャシの外側で配線するようにしています。放熱上は不利な構造ですが、発熱のほとんどない電池管なので可能な構造と言えるかもしれません。 |
側面にコイルパックの調整部があらわれます。 |
反対側の側面は電源部などです。 |
右側面が9R-59DS用のコイルパック
中央付近がリアクションコイルを巻き足したCバンドのOSCコイル
左側面が電源部
裏側から。真空管はすべて天板からぶら下がります。
スプレッドバリコンの右側は電池を置くスペースです。 |
OSCとMIX 前述のように9R-59DS用のトリオのコイルパックと9R-59用のナショナルのバリコンを用いていますが、このOSCコイルはグリッド−カソード間でのハートレー発振を想定したコイルですので、5球高1スーパーと同様にOSC管のフィラメントのマイナス側をタップにつなぎました。 OSC、MIXとも現時点では7極管1AC6に落ちついていますが、OSCについては5極管1U4、1L4、1T4、また7極管1R5、1AC6をそれぞれ3極管接続するなど色々試しました。(もちろん管に合わせて接続を変えたり、抵抗などを変更したりしましたが、こういったこともこの特異な構造のおかげで簡単に出来ます) 結果は1AC6がAバンド、Bバンドの下のほうまで最も強く発振し良好でしたが、Cバンド、Dバンドはほとんど発振しませんでした。ただしDバンドの上のほう(およそ25MHz以上)は発振します。おそらくDバンドのOSCコイルについているリアクションコイルによるフィードバックが効いているのだと思い、試しにCバンドのOSCコイルにもリアクションコイルを巻いてみたところ、Cバンドも全域で良く発振するようになりました。そこでDバンドのリアクションコイルを巻き足してみたりしたのですが、これは今のところあまり上手くいっていません。 RFとIF RF、IFとも1L4で、それぞれAVCをかけています。IFの同調は、1段目はムラタのセラミックフィルタとトランジスタ用IFTの組み合わせ、2段目とその出力側はナショナルのIFT(中古ラジオからの取り外し品)です。またIF段はVRでスクリーングリッド電圧を変えることによりゲインを調節できるようにしていますが、VRを絞っても信号を絞りきれませんので、VRをもう少し大きくするか、VRの一端をアースしてきちんと分圧するなど、もう一工夫が要りそうです。 AM検波、AFとPA 1S5で検波と低周波増幅、3Q4で電力増幅で、特に変わったところはありません。3Q4のバイアスは、B電源のマイナス側に抵抗を入れて、その電圧降下でグリッドの電位を少し下げています。従ってその分だけ他の管のプレート電圧も下がることになります。3Q4のプレートにコンデンサとVRを接続して、簡易的に音質調整をしています。 BFOとプロダクト検波 1U4でBFO発振させ、1AC6でプロダクト検波することを狙いましたが、発振が弱いためかビートが弱く、一方AM信号は常に十分な検波感度がありますので、単なるプレート検波になってしまっているように思われます。もう少し工夫が必要なようです。ちなみにBFOコイルには現時点ではAMトランジスタラジオ用のOSCコイルを流用しています。 SメータとANL Sメータをきちんと振らすために、AVC電圧を1S5で増幅して、プレート電圧の変化を読み取るようにしました。これで1球使うのはちょっともったいないのですが、メータは大変良く振れています。1S5の2極管部を利用して、簡易的なANLとしています。なおSメータは切り換えて、A電圧、B電圧のチェックもできるようにしてあります。 CAL 較正用の発振器は1U4のグリッド−プレート間にクリスタルを入れています。手許にあった1MHzのクリスタルを差し、グリッドリーク抵抗をはじめ100kΩにしていたのですが、1MHzは発振しますが高調波があまり出ません。バイアス電圧を測ってみたところ、A級ないしAB級くらいの動作になっていると思われたので、リーク抵抗を増やしてC級動作にしたところ、高調波も強く出るようになりました。 電源回路 電源は前述のようにACと電池の2ウェイです。B電圧は最大性能を狙って90V(006Pを10本直列)を基準としましたが、A電圧をどうするかは少し悩みました。結果は3V(単1を2本直列)を基準として2球ずつフィラメントを直列にして、RF、IFの増幅管などに適度なバイアスがかかるようにしました。 ACの場合のA電圧は、3端子レギュレータ(LM317T)を用いて約2.8Vに調整しています。この3端子レギュレータは、およそ1.3Vから30Vくらいの範囲で、1Aくらいまでの定電圧電源を作るのに大変便利です。ただし入力電圧と出力電圧にある程度の差を持たせないと十分な電流が得られないなど、使用上の注意点はいくつかあるようです。 |
次にトラッキング調整ですが、概ね次の要領で進めました。 (1) バリコン、トリマ、PC(パディングコンデンサ)、及びストレーの各容量、コイルのインダクタンスを入力定数としてトラッキングエラーを求める計算表とグラフをEXCELで作成し、各定数を推定して設定し、トラッキングの設計を行う。 (2) 設計値に合わせるべく調整したうえで、何点かの受信周波数でANT/RFの同調周波数をディップメータで計測して、エラーが設計どおりになっているか確認する。もし設計値からずれている場合は、ずれている原因を推定して定数を見直し、(1)をやり直す。 (1)、(2)を繰り返して調整するのですが、これだけではわかりにくいと思いますので、以下に各バンドで具体的に行ったことを説明しようと思います。 |
Dバンドの下半分くらいが発振せず受信できませんが、その他のバンドは感度良好で、30年以上ほったらかしにしていた9R-59DSより高感度です。もっとも私の9R-59DSは劣化の上に調整ズレもあるようなので、比較にはなりませんが・・・ うまく動かないと思っていたプロダクト検波は、BFOの調整がくるっていたようで(高調波を発振周波数と勘違いし調整していたので、発振が弱いと思っていた)、調整し直したらまともに働くようになりました。周波数の高いところでイメージ混信が多少ありますが、シングルスーパーなので仕方ないでしょう。 途中長いブランクはありましたが、構想からちょうど2年で、自分としてはかなり満足いくものができました。途中で回路を変更したり、調整し直したり、かなりの試行錯誤がありましたが、シャシの内側と外側を逆にしたような特異な構造を始めに思いついたので、製作、改造、調整作業を楽に進められたのが、なんとか完成に至ることができた大きなポイントだと考えています。 |
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